入学試験の日

中学生は、親や先生といった保護者の同伴や引率なく学区外に外出することは禁止されていたりする。まあ余計なお世話ではあるけれども。

今の中学生は知らないけれども、自分のときは、自転車で片道1時間もかけて子供だけで市街地に映画を観に行って、それが発覚した一緒に行った別のクラスの生徒は担任が体育教師だったせいで、なんか竹刀でバッキバキにひっぱたかれた上に何時間も正座させられたなんつーこともあった。何様かしらないが、今だったらまさに話題の「体罰事件」であるけれども。

ところがある日、突然生徒だけで行ってこいといわれる日がやってくる。部活の遠征ではないので、先生もついてこない。

今までさんざんぱら禁止だなんだと言っておいて、突然子供だけで行けってのは、随分乱暴なハナシだ。それも世間一般に通勤通学時間帯。長野くんだりでは大雪も降ろうかというこの季節に。

しかしそれは、自分たちの将来に関わることなので、やはり自分たちで成さねばならぬことであったりする。

まだ大人とは認めてもらっていないけれど、この日はじめて、そしてこの日を境に、必要なことがあるなら、自分達で目的地に向かわねばならぬことになる。

その結果がどうなるのかは重大だし気になるところだけれども、実は案外なんとかなるというか、何方様にもお天道さまとコメのメシはついてくるというので、あまりたいしたことではないのかもしれない。

むしろ、当人やその周りの意志には関わらず、この日「子どもではなくなった」ことが事件なのかもしれない。

めでたいのかどうかはよくわからないけれども、一応、おめでとう、と、影でこっそり言っておくことにするよ。本人に言ってもしゃらくさいと思うのでね。

 

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