オオサクラソウの花の色は


勤務先用に2014年11月26日付けで書いたものです。


高原植物にオオサクラソウ (大桜草) というのがありまして、だいたい夏の頃に赤の強いピンクというか紫というか、紅紫色っていうんですかね?鮮やかな色の花があります。なかなか健気に可憐な山野草ですね。

お写真は Wikimedia Commons より拝借させていただきました。Alpsdake 様という方がご撮影された、Creative Commons 表示-継承ライセンスのものでございます。

その昔、白馬岳のふもと、現在の小谷村のあたりに、豪勢なお屋敷のお金持ちが住んでいたそうで。そしてまたそこの娘さんが大変な美人だったそうなんですな。名をたまきさんとおっしゃったとか。

そんなわけなので、たまきさんは大変モテモテだったわけですけども、まあなにせ結婚相手としては好条件ですからね。親としてはお相手は吟味したいわけで、そんじょそこらのヤロウは門前払いを食らわしていたんだそうで。

しかし、いつの間にやらたまきさんは、あんましお金持ちには見えないカンジの、若いイロオトコと密会しているようでありまして。

たまきさんの方は、もちろんゆくゆくは親の許しを得て、ムコにきてくれればと思うわけですから、その男の素性を聞きますわな。ところがそのヤロウは素性どころか名前も名乗らない。「今は言えぬがいつかわかる」と言うばかりだそうな。

今の小谷村がどうかは実は行ったことないので知りませんが、当時のそこは素朴な山の村ですから、そんな逢瀬を重ねているとあっという間に村中で噂になったりします。

「おっあのヤロウ誰よ?」「山から降りてくるけど、山むこうのヒトなんかね?」

まあそんな具合なので、もちろん親の耳にも入るわけです。そして、そんな素性のわからねぇようなヤロウと付き合ってくれるなと。どうしても別れぬというなら相当の人に頼んで痛い目にあわせてでもという物騒なハナシになるわけです。まあ無理もありませんが。

で、まあたまきさんもそこまで言われちゃ仕方ないですし、そもそも落ち着いて考えればおかしなハナシだという自覚もあったのかもしれませんな。親のコトバに従うことにしたわけです。

そんなわけで、たまきさんは気が重いながらもそのイロオトコに別れ話を切り出します。

しかし、男のほうは「そうですか」とはいきませんで「よくもそんな嘘を!女に裏切りの心があれば、男には恨みの心がある!」と烈火のごとく怒ります。

たまきさんは「いやそんな、裏切るつもりでは…」と顔をあげたところ

その男はものすごい形相で、大きく裂けた口から炎を吐き散らす、とんでもないバケモノになっていたんだそうな。

その正体は白馬岳に済む「大婆王 (だいばおう)」といって、いちど怒ると手の付けられない、とても恐ろしい魔神だったのだそうで。

大婆王はたまきさんを小脇に抱えると、稲妻一閃、雷鳴とどろく中、黒雲に乗って消えてしまったとか。

親をはじめ村の者どもがかけつけたときにはすべてが終わっており、近くに咲いていた小さな白い花が、たまきさんの血で赤く染められていたと。

それが、冒頭紹介しました「オオサクラソウ」なんだそうでございます。

最初高原植物の紹介からはじまって、かわいらしいハナシかと思ってきいていると、とんでもないスプラッターであるという、むしろ悪趣味オチなところがなかなか楽しいお話しでございますな。

白馬~小谷のあたり、先日の御嶽山に比べると、あんまり火山がどうこういうハナシもありませんし穏やかな印象があるのですが、実はこのあたりの山々も、人智の及ばない大変なエネルギーを秘めているので気をつけろよ、ということを、こういうおはなしで伝えてきているのかもしれませんね。

先の長野県神城断層地震において、このあたりで大変な被害があったわけですが、各種報道されておりますとおり、住民の皆様の相互努力により、亡くなった方がいらっしゃらなかったとのことで大変すばらしく、そのおかげで過度に深刻にならずに、こんな与太話もできようというものです。

無力なワタクシはこんなお話しをして思いを馳せることぐらいしかできませんが、もろもろ落ち着いたら、それこそこういうお話しを思い出して、オオサクラソウでも拝見しにお邪魔してみたいものです。

関係者の皆様には1日もはやく平穏が訪れますよう。

 


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