イミテーション・ゲーム 〜変わっていることと普通であることの距離〜

映画

画像は拾い物です。問題があったら取り下げますのでご指摘くださいねっと。古いロンドンの町並みをこれまた古めかしいチャリンコでかっとばす硬い表情のベネディクト・カンバーバッチがすげー絵になるので、このシーンだけでもうこの映画は「勝った」な、と正直思った。

というわけで少し前にやってた映画の感想を下書きだけ書いて忘れていたので今頃清書してみた。

6月20日にPepperの一般販売がはじまったり、IBMがWatsonという人工知能ソフトでいろいろやってたりして、ヒトガタの機械、もしくはヒトのように考えるソフトウェアがここへきて急に目立つようになってきた。

先日、10年ぐらい前に一緒にシゴトしたことのある、当時SFCの学生だったひとと久々にお会いして昼メシをご一緒させていただいたのだけれども、その彼曰く、自分で人工知能作ってそれによって自分の人生の選択も結構決めさせてるとか言ってて、まるで「東のエデン」に出てくる世間コンピューターみたいと思って驚嘆した。なんかもう普通にそんな時代なのか。

で、機械が人間のように知的かどうか、つまりそれを「人工知能」と呼んで良いかどうかを判断するための「チューリング・テスト」というものを提唱したといわれ、コンピューターサイエンスの世界での偉人のひとりであるアラン・チューリング氏の伝記映画がこの「イミテーション・ゲーム」である。

基本的にチューリング氏は「変わっている」ひとである。演じるベネディクト・カンバーバッチはテレビドラマ「シャーロック/Sharlock」で、やはり非常に優秀ながら世間的な常識からは大きくずれてしまっている、「変わっているひと」シャーロック・ホームズを演じていた。

そういう意味ではアクティブで激しいシャーロック・ホームズに対し、もの静かでリアリティのある変わり者が本作のアラン・チューリングといえる。

いやそれで、最近バードマンとかパトレイバーとか、どちらかというとハイコンテクストな映画を続けてみた後だったので、久々のローコンテクストな映画だったのちょっとほっとしながら見たというのが正直なところ(苦笑。

僕は、コンピューターのシゴトをしているひとは、「変わっているひと」ばっかりだと正直なところ思っている。もしかしてもうイマドキはそうでもないのかもしれないけど、昔のパソコン全盛時代とか、インターネット黎明期なんかは変なヒトばっかりだった。その頂点にいたのがスティーブ・ジョブズとかビル・ゲイツとかだったわけだけれども。

ある程度コンピューターのシゴトをし続けているひとは、そのひとの一生の中で、誰かから「あんたは変わってるね」と言われたことのないひとはいないのではないかと思う。

そういう意味で、アラン・チューリングはとびきり変わっていた。そしてその変わっている要素の1つが、当時の英国の法律上ゆるされないことだった。まあ早いハナシが「ゲイ」だったわけ。

むしろ今の英国はその方面では世界的にいちばん進んでいるといってもいいかもしれない国みたいで、いや詳しくはしらないけど、ハウスミュージックとかのゲイカルチャーは英国から来てるんだろうと勝手に思っているのだけど (間違ってたらごめんなさいね)、そういう意味では英国の歴史を振り返るとき、アラン・チューリングに強いてしまったことは大いに反省すべきことなのかもしれず、本映画のラストもそのような懺悔がされていた。実際英国政府がチューリング氏に正式に謝罪したのは2009年のことだそうである。

われわれコンピューターのシゴトをしているヒトは、なにかしら「変わっている」と僕は偏見を持っているわけで、じゃあ僕自身はどうかというと、さすがにチューリング氏ほど変わってるってこたあないかもしれないけど、その分だけというかなんというか、彼ほどの天才でもない。

そういう意味で、常識との距離というか、「変わっている」ことの距離ということを考えさせられる映画であった。

近年プログラミング教育を広くいろんなひとにさせようという動きがあるようで、例えば長野県上田市には通信制のプラグラミングの高校があるし、どこかの企業は技術職以外を含めた全社員にプログラミング言語を必修とするようなニュースがあったような記憶がうっすらある。今もやってるのかは知らないけど。

確かにプログラミングを学ぶ機会が増えるのはいいことだと思う。だがしかし。

はたしてプログラミングって、万人に向くものなのだろうか?

と、改めてこの映画をみてひっかかってしまった。まあそんなことを思う僕が単に老害なだけかもしれないけれども。

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